自分の市場価値がわからないエンジニアが、最初に棚卸しすべき4項目

職務経歴書の担当業務の欄で手が止まっているエンジニア
「自分の市場価値って、どこで測られているんだろう?」
「職務経歴書の担当業務の欄で、毎回そこから先が書けない」
「聞かれたときに出す材料が、手元にそろっていない」

そんなふうに書く手が止まるあなたへ。

結論から言えば、
市場価値という言葉は、決めた・通した・直した・渡したの4つに置き換わります
言葉のほうを置き換えると、比べる相手が先に決まります。

この記事では、議事録・稟議書・障害報告書を1枚ずつ開きます。そのうえで、手持ちの経験がどこへ着地するのかをしっかり見ていきます。

 

結論 — わからないのは、測る物差しが決まっていないから起きる

物差しが決まらないまま、まず測る対象を一つ選ぶ

「市場価値がわからない」という言葉は、能力の不足として語られることが多いです。ただ、実務で当たると、そうではない場面のほうが多くありました。

手を動かした量は十分にあります。ただ、その量を誰が読むどの欄に入れるかが決まっていません。

物差しが決まらないのには理由があります。エンジニアの職種名は、同じ呼び名が複数の仕事を指しています。呼び名が定まらないので、比べる相手も定まりません。

最初にやることは、外の相場を調べることではありません。手持ちを、どの物差しでも読める形に並べ直すところからになります。

 

本記事では、その並べ方を4項目で示します。診断も点数化もしません。点数は、物差しが決まって初めて意味を持ちます。

4項目にしたのは、この4つが職種名に依存しないからです。決めた・通した・直したの3つは、開発側でも運用側でも同じ意味で読まれます。

職種名で棚卸しをすると、名前が変わった時点で書き直しになります。行動の単位で持っておけば、読み手が変わっても並べ替えるだけで済みました。

 

公的な職業分類の側にも出ている、同じ揺れ

公的な職業分類の表を見て、同じ呼び名が複数の職業にまたがっているのを確かめる

これは感覚の話ではありません。職業情報提供サイト job tag(厚生労働省)を開くと、同じ呼び名が別々の職業の別名として並んでいます。

「システムエンジニア(基盤システム)」の別名には社内システムエンジニア、システムアーキテクト、インフラエンジニアが並びます(2026年8月13日 取得)。

 

一方「運用・管理(IT)」の別名には、システム管理者、システム運用管理者が並びます(同日取得)。

つまり日常で「社内SE」と呼ばれている仕事は、公的な分類の上では2つの別の職業にまたがっています。

 

集計も別になります。就業者数は基盤システム側が 656,770人、運用・管理側が 207,400人、受託開発側が 389,760人(いずれも令和2年(2020年)国勢調査の結果を job tag が加工した値。2026年8月13日 取得)。

ここで見たいのは規模の差ではありません。同じ呼び名の仕事が、別々に数えられているという事実のほうです。あなたがどちらとして数えられるかは、呼び名では決まりません。

 

ここから言えるのは1つだけです。自分がどの職業の物差しで読まれるかは、職種名では決まりません。だから棚卸しは、職種名ではなく行動の単位で行います。

 

棚卸しの4項目

棚卸しの四項目を、紙の左端に上から書き出す

行動の単位は、4つの動詞に寄せると書き出しやすくなります。決めた、通した、直した、渡した。どれも書類か記録が残っている出来事なので、思い出しながら書くより現物を探しに行くほうが早いです。

  • 決めた——自分の名前が決定欄にあるか
  • 通した——止まっていた理由まで書けるか
  • 直した——再発を止めたと言い切れるか
  • 渡した——渡した先が回り続けているか

 

4つとも、確かめるのはあなたの手元にある現物です。上長の見立ても、外の相場も要りません。

 

1. 決めた記録に書くのは、結論ではなく決め手のほう

いちばん効いたのが、この項目でした。技術の選定、方式の決定、外部に出すか内製するかの判断。

書くのは結論ではなく、比べた対象と決め手のほうです。「A を採用」ではなく「A と B を比べ、運用の人数が足りない点で A にした」と書きます。

見えるものとして残っているのは、設計レビューの議事録の決定欄、比較表、稟議に添えた資料。この3つのどれかにあなたの名前があれば、決めた記録として数えられます。

 

比べた対象が社内の別案から選んだものでも構いません。外部製品との比較でなくても、選択肢が2つ以上あって決め手を書ければ材料になります。

数が少なくても構いません。ひとつを深く書けるほうが、数を並べるより読まれ方がよくなりました。個人の経験に基づく記述であり、同じ結果を保証するものではありません。

 

2. 通した記録は、止まっていた理由まで書けているか

技術以外の理由で止まっていた案件を進めた経験は、経歴書に書かれないまま消えやすいです。

予算の枠が付かずに止まっていた更改、部門間の合意が取れずに止まっていた移行、承認の経路が決まらずに止まっていた導入。

 

残っているものとしては、稟議の回付履歴、合意の議事録、切り替え当日の作業計画があります。

この項目は、規模の大小より止まっていた理由を書けるかで読まれ方が変わりました。理由が書ければ、同じ型の停滞を動かせる人として読まれます。

 

動かした手段も書いておきます。関係者を集めたのか、判断の材料を作ったのか、決裁の経路を変えたのか。手段まで書けると、再現できる経験として読まれます。

 

3. 直した記録で読まれるのは、件数か、再発の有無か

障害対応は件数で数えられがちですが、件数はほとんど読まれません。読まれるのは再発を止めたほうです。

残っているのは障害報告書、恒久対応の設計、監視項目の追加履歴。「止めた」と書けるのは、同じ事象が再発していないことを確認できている場合だけになります。

確認できていないなら、そう書きます。実務では、恒久対応まで届かず暫定で止まっている件のほうが多くありました。そこを正直に書いても評価は下がりません。

 

むしろ書き分けができていること自体が読まれます。暫定と恒久の区別を付けている人は、運用の設計ができる人として扱われました。

原因の切り分けまで書ければ、なお読まれます。

 

4. 渡した記録が残るのは、手順書と引き継ぎ資料

属人化を外した経験は、手を動かした記録として残りにくいです。ただ、読み手はここを見ます。

残っているのは、手順書、引き継ぎ資料、運用の自動化で消えた作業。作業が消えた場合、消えた分は記録に出てこないので、自分で書き起こす必要があります。

 

渡した先が続いているかも書けると強くなります。手順書を渡したあと、実際に他の人が回している状態が半年続いているなら、それは仕組みになっています。

教えた相手の人数は書かなくて構いません。回り続けているかどうかだけが読まれます。

 

この項目が空欄のまま経験が長い場合、自分がいないと回らない状態を作ってきたという読まれ方をすることがあります。

 

棚卸しの結果をどう読むか

埋まった欄と空いた欄を見比べ、読み方を決めているところ

4項目を書き出すと、たいてい偏ります。全部が均等に埋まる人は、ほとんどいませんでした。読むのは埋まり方のほうです。

  • 3だけが厚い:運用側の物差しでは強く読まれます。決めた記録が薄いので、設計側の物差しでは材料が足りません
  • 1と2が厚い:社内側の物差しに寄っています。手を動かした記録が薄いと、開発側では読まれにくくなります
  • 4が空欄:どの物差しでも減点にはなりませんが、規模の大きい組織ほど見られる項目になります
  • 全部が薄い:経験が足りないのではなく、書き出していないだけの場合が多いです。もう一度、案件ごとに分けて書きます

 

偏りが分かると、あなたが次に埋める場所も決まります。市場価値がわからないという状態は、この偏りが見えていない状態でした。

埋める順番は、厚い項目の隣から取ります。3が厚い人が1を取りにいくより、3の延長で恒久対応の設計を決めた記録として書くほうが早いです。

動く時期そのものの判断は、いつ動くかは年数で決まるのか、起きた出来事で決まるのかを分けています。時期の判断がつかないときは、その記事にも目を通しておくと、比べる材料がそろいます。

 

書き出し方の側だけが、いまから動かせる

同じ経験を、書き方だけ変えて画面に打ち直す
  • 事実として固定:過去に配属された案件そのもの。通らなかった区間は後から通えません
  • 事実として固定:職種名が複数の職業にまたがっていること。呼び名の側は動かせません
  • 書き方で動く:手持ちの書き出し方。同じ経験でも、4項目で書くと読まれ方が変わります
  • これから足せる:これから埋める項目。空欄が分かれば取りにいけます

 

棚卸しをして材料が出てくるなら、問題は書き方の側にあります。ここは現職のまま片づきます。

この切り分けは、動くかどうかの判断より手前にあります。材料が出ない状態で相談に行くと、相手の質問に答えられないまま時間が過ぎます。

 

棚卸しをしても空欄が埋まらないなら、材料そのものが足りていません。この場合に必要なのは相談ではなく、埋める場所を先に決めることになります。

 

4項目とも、いまの案件から取りにいける

いまの案件の資料から、四項目の材料を取りに行く

空欄が分かったら、空欄になった項目から取りにいけます。4項目それぞれに、現職で手が届く形があります。

  • 次に方式を選ぶ場面で、比べた対象と決め手を議事録に残す。結論だけを書かない
  • 止まっている案件をひとつ選び、止まっている理由を文書にして関係者に配る。動かなくても理由の記録は残る
  • 暫定で止まっている障害をひとつ選び、恒久対応の設計まで書く。実装まで届かなくても設計は残る
  • 自分だけが手順を知っている作業をひとつ選び、手順書にして他の人に渡す
  • 書けた分を1枚に並べ、薄い欄の隣にある項目から順番を決める。空欄そのものを先に取りにいかない

 

上の4つは、いずれも数か月あれば手元にひとつは作れます。ひとつでも書ければ、その項目は空欄ではなくなります。

ここまでやってから外に出ると、聞かれたときに答える材料がある状態で話せます。材料が手元にあるだけで、面談の入口はぐっと変わりました。

 

棚卸しをしても収入の側が動かない場合は、制度の側で止まる額と、読まれ方の側で止まる額で分けています。そこだけを扱った1本ですので、行き詰まったら頼ってみてください。

 

空欄が埋まらなかった場合に見る、相談先の条件

棚卸しの空欄が埋まらなかったときに見る、相談先の条件

4項目を並べても空欄が埋まらないなら、外の物差しを借りる段です。借りる前に各社の公表内容を読みます。

読むのは対象と流れの2つです。対象は交渉できないので、外れていればそこで終わります。

 

対象は、レバテックキャリアがITエンジニアとデザイナー。Geekly はIT・Web・ゲーム業界の転職になります(各社公式サイト。2026年8月17日 取得)。

レバテックキャリアの流れには、申し込みと面談の間に希望条件の入力が挟まります。Geekly は登録の次が面談だと公表しています(各社公式サイト。2026年8月17日 取得)。

 

上の2段落は各社の公表文言のままです。4項目をどの物差しで読むかは、公表されていません。

当サイトの評価軸に基づく整理であり、客観的な優劣を示すものではありません。評価軸は広告掲載方針に記載しています。

 

噛み合う条件と、外れる条件

筆者は本サービスの利用者ではありません。以下は各社の公表情報と、SE・社内SE としての実務経験からの整理です。

4項目が一通り埋まっていて、それがどの物差しで読まれるかを知りたい。レバテックキャリアは、この状態と噛み合います。空欄のまま持ち込むと、読ませる材料が無いまま話だけが進みます。

 

Geekly のほうは、対象領域を IT・Web・ゲーム業界と公表しています。この外側で物差しを探しているなら向きません。雇用形態で絞る条件は、公式サイトからは確認できませんでした。

地域で切られるかどうかも、両社の公式サイトからは確認できませんでした。公表情報だけでは判断がつかないので、面談で確かめる項目として残ります。

 

どちらも、求人を眺めるためではなく面談を通すために置かれています。4項目のうち厚い場所と空欄は、あなたの側から先に出します。相手に見つけさせると、その工程がまるごと持ち時間から引かれます。

 

 

棚卸しの4項目は、希望条件の入力欄にそのまま移せます。厚い項目が条件になり、空欄がそのまま質問になります。

 

 

空欄のままの項目は、埋めてから行くより、そのまま質問として持っていくほうが早いです。一言にするのは厚いほうだけで足ります。

 

まとめ — 棚卸しの結果は2つにしか分かれない

棚卸しの結果が二つの山に分かれて机に置かれた状態

4項目に書き出すと、行き先は次のどちらかになります。

材料が出てきた場合。問題は書き方の側にありました。読まれる物差しに合わせて並べ替えるところから始まります。相場を見るのは、その後で足ります。

 

空欄が埋まらなかった場合。材料そのものが足りていません。この場合に要るのは相談ではなく、埋める場所を先に決めることです。

どちらに転んでも、あなたが次にやることは決まります。手が止まるのは、書き出すより先に相場を見にいったときでした。

 

市場価値は外から与えられる数字に見えて、実際に読まれる材料を出しているのはあなたの側です。棚卸しは、その材料を先に自分で見ておくための作業になります。